歌詞そのまま…未来誓い合う場所 秩父・旅立ちの丘

 嵐のような受験シーズンが過ぎると、たちまちやってくる別れと巣立ちの季節。今年も多くの児童・生徒が、卒業式で合唱曲「旅立ちの日に」を歌うことだろう。

 「勇気を翼にこめて 希望の風にのり このひろい大空に 夢をたくして」−。卒業ソングとは思えないさわやかな歌詞と曲調が受け、平成3年に誕生すると瞬く間に全国で愛唱される定番曲に育っていった。

 作詞したのは、埼玉県秩父市立影森中学校の元校長、小嶋登さん。音楽教諭から「卒業生に贈るこの世で一つの歌の歌詞を作詞をしてほしい」と頼まれ、筆を執った。その小嶋さんは1月、急性心筋梗塞で帰らぬ人となったが、曲は今後も歌い継がれていくことだろう。

 「旅立ち−」を記念して18年に造られたのが、秩父市の「秩父ミューズパーク」にある「旅立ちの丘」だ。武甲山と市街を一望できる山の頂に、展望台を兼ねたモニュメントが建つ。

 モニュメントは、階段を上ってアーチをくぐると、影森中の生徒が歌う「旅立ち−」が流れる仕組み。夜間には、午後9時までライトアップされる。

 付近の売店や道の駅では、ミニ絵馬と土鈴(各200円)を販売している。モニュメントの手すりは五線譜を模したもので、「絵馬や土鈴をつるすことで、五線譜上で音符を奏でるイメージ」(秩父市観光課)をもとにつくられた。「卒業生に贈りたい」と、30個ほどまとめ買いする教員もいる人気商品だ。また、一昨年ごろからは、錠前を手すりにはめるカップルも増えてきたという。

 21日、旅立ちの丘を訪ねると、翼を広げた鳥が大空を悠々と羽ばたいていた。手書きメッセージを添えたミニ絵馬や土鈴が風にそよぎ、その風景は歌詞の世界そのものに思えてくる。

 小嶋さんが歌詞に込めた思いそのままに、希望に満ちた未来を誓い合う場所になっている。

【名作の舞台】歌詞そのまま…未来誓い合う場所 秩父・旅立ちの丘 - MSN産経ニュース